NPO法人ミュージックソムリエ協会

インタビュー 南部靖之氏

著名人が語る「私の1曲」

 

第3回 南部靖之さん(パソナグループ 代表)

音楽活動と仕事の両立を支援する「パソナミュージックメイト」をはじめ、「パソナ ア・テンポ」、「夢オーケストラ」など、音楽分野の支援に力を入れている総合人材サービスのパソナグループ。創業者にしてグループ代表の南部靖之氏に、音楽と仕事について、そして「私の1曲」を語っていただきました。

 

――パソナグループは、一般企業ではなかなか実施していない音楽家の支援や音楽関連の取組みを行っていらっしゃいますね。

南部:音楽って、すごくいいものでしょう。音楽を介すれば誰とでも友だちになれるし、国境もない。僕は外国に行くと、必ずミュージカルやオペラに行きます。単純に音楽が好きなんです。僕の娘達も、長女はフルート奏者で次女はヴァイオリニストです。僕もピアノを弾いたり、和太鼓を演奏します。

 

――「パソナミュージックメイト」では仕事と音楽の両立という、現在の社会システムの中では難しかった音楽家の就労支援を実現されました。また「パソナ ア・テンポ」では若手音楽家に演奏の機会を提供し、クラシックやミュージカルなどの公演企画など、突出した企業文化活動をされています。音楽を文化事業として会社に組み込まれたきっかけはなんだったのでしょうか?

南部:きっかけというようなものではないのですが、言うなれば数字のバランスです。会社としていくら収益が上がっても、「心の黒字」を大切にしないとバランスがとれません。パソナグループ本部の1階の水上ステージでは毎日ピアノの生演奏が行われ、上階にはコンサートができるホールがある。和太鼓も置いてあります。音楽を聴くことで、心が潤い、みんな明るい気持ちで頑張れる。コンクリートジャングルの中では、人間的なバランスを取りながら創造力を発揮するのはなかなか難しいと思います。僕自身がそうですから、社員にも楽しく笑顔で働いてほしいと思ったんです。

 

――このビル自体もオアシスのようですね。外観は壁面緑化、内部もいたるところに植物があって。それも観葉植物ではなく野菜やお米など、まるで農園のようです。ここで働いていると楽しいでしょうね。

南部:音楽も植物も、社員は喜んでくれているんじゃないかと思います。この壁面は、植物をツタのように上から垂らしているのではなく、本来執務スペースだった部分をへこませて、ベランダを作って、そこに直接植物を植えているんです。だから常時いろいろな花が咲く。5月には薔薇のハナが咲き乱れますが、僕は、愛する社員に10万本の薔薇をプレゼントするような気持ちでいます。そして会社の中にはさまざまな野菜が育っている。社員の家族がよく訪問してくれるのですが、「こんな環境で仕事ができるなんて、うちの子は幸せですね」と羨ましがられることもあります。平日は一般見学も可能なので、修学旅行生が訪れたり、バスツアーの団体客が停まったり、観光地のようになっていますよ。

 

――都心のビルの中でこんなことができるのですね。また、オフィスにピアノがあるというのはなんとも嬉しいことです。ではパソナグループを創業するにいたった南部さんの、お気に入りの1曲を教えていただけますか?

南部:そのときどきによっていろいろな曲が好きだったし、思い出もたくさんありますが、やはり強烈なのは映画音楽ですね。強いて1曲を選ぶならば「慕情」です。

 

――第二次大戦後、イギリスの植民地となった香港を舞台にした悲恋物語ですね。主題歌はサミー・フェイン作曲の「Love is a Many Splendored Thing」。

南部:今でも香港に行くと舞台になったペニンシュラ・ホテルの別館に行くんですよ(※撮影はレパルスベイ・ホテルだったが、現在はペニンシュラ系列のレストランとなっている)。青年期に心を震わせて観た映画とその音楽は、深く心に残っています。でも今の若い人にとっては古くさいかな。「慕情」を知らない人のほうが多いかもしれないですね。

 

――何十年経っても心に残る音楽はやはり名曲だと思います。ピアノもお弾きになりますが、やはり「慕情」を?

南部:ピアノで弾くのは「愛の讃歌」です。僕は神戸出身で、宝塚が好きなので(笑)。

 

――演奏会にもたくさん足を運ばれるそうですね。

南部:僕はライブが好きなんですよ。家でCDを聴くよりも、演奏会で生の音楽を聴きたいです。最近はいろいろなコンサートの招待がきますが、必ず行くようにしています。会社のイベントも含めると週に3回は演奏を聴いています。

 

――これだけお忙しいのに、時間を作るのは大変ではありませんか?

南部:僕は1日を4つに区切っているんです。6時間は睡眠、6時間は営業などの仕事、取材を受けたり大学で教えることなど喋ることに6時間、あとの6時間はパーティや趣味。35歳くらいのときにそう決めてから、ずっと実行しています。

 

――仕事時間が少し短めに感じますが(笑)。取材などでお話しすることや、パーティも結果的には仕事に繋がることですね。そのような生活の中で、南部さんにとって音楽はどのような存在なのでしょうか。

南部:人生に絶対に必要なものですね。いま教鞭を執っている大阪大学の大学院では「リーダー論」に音楽を入れているんです。音楽はチームワークであり、心を打ち解けさせるものでもあります。仕事で集中力を高めるにも、心を通わせるにも、もっとも有効なのは音楽とスポーツですね。だから僕は仕事の中にも音楽を入れる。社会貢献や文化創造を、企業理念と併せ、音楽を通して人々の心を優にしていきたいと考えてます。

――短期的には採算度外視ではと思うほど、細やかで密度の濃い音楽・文化事業に積極的に取り組まれている理由が少しわかりました。それは「人を活かす」という会社の理念を根底で支えているものなのですね。お忙しいところ、興味深いお話をありがとうございました。

 

南部代表が部屋に入って来た途端に、場がパァッと明るくなりました。普通は社長が見えると緊張が走るものですが。インタビューは同席した社員の方々と南部代表の笑い声で終始。そして廊下に出ると、すれ違う社員すべてが和やかで明るく輝いていました。

東日本大震災以来、否応なく価値観の転換を迫られた日本。いままでのように利便性と合理性だけの追求はただ虚しいだけです。この会社は、そして南部代表は、ずっと前からすでに価値観を転換していました。人の繋がりを大切に、みなが支え合い、創造して心豊かに暮らせる社会をめざし、そのための事業を会社の理念としていたのです。その要に音楽があること、そのような慧眼を具現した会社が存在していることに、大きな希望を感じたインタビューでした。

 

取材・文:山崎広子

 


南部靖之氏プロフィール

なんぶ・やすゆき●株式会社パソナグループ 代表取締役グループ代表。1952年1月5日兵庫県神戸市生まれ。1976年2月、「家庭の主婦の再就職を応援したい」という思いから、大学卒業の1ヶ月前に起業。人材派遣のシステムをスタートした。以来、新たな就労や雇用のあり方を社会に提案し続けている。「自分を活かせ!」(講談社)、「創業は創職である。」(石川好氏との共著/東洋経済新報社)、「これから「働き方」はどうなるのか」(竹中平蔵氏との共著/PHP研究所)など著書多数。

 

 

 

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