新たなるNEXT GATEへ 白井貴子は しなやかに進み続ける

1981年にデビューし、今も活躍を続ける白井貴子。ロックンロールエンジェルは、40年の間で、フォーク、ポップスなど幅広い音楽を創り出すと共に、自然環境との共生と保全に関する活動、PEACE MAN CAMPにも力を注いでいる。自身の想いを軸に置きながら音楽活動を行う、彼女の2021年の取り組みレポートと、2022年の活動を紹介していく。


「茅刈」から知る先人たちの循環型社会

コロナ禍が続く2021年。新しくなった公式HPにて9月1日に、白井貴子は現在の地球環境の悪化や社会情勢、そして自身のデビュー時から今に至る活動に関してメッセージを書いている。読み進めていくと、彼女が80年代末にビジネス的な音楽活動から転換したいと感じた状況と、いま社会変容が迫られる地球環境の過酷な状況には、通じている点があるように感じた。すると、音楽とPEACE MAN CAMPという白井貴子の活動の柱は、実は2本ではなく、大きな1本の柱のようにも思えた。

2021年10月23日、長野県北安曇郡小谷村。長野県北西に位置し、多くのスキー場を擁する場所で、「第7回 PEACE MAN CAMP」が開催された。今回、体験するのは茅刈と杉玉作り。茅葺屋根に欠かすことができない”茅”は、春に茅場を焼くことで、夏に茅が生い茂り、そして秋になるとそれを刈り取るというサイクルで成り立っている。屋根に使われる茅は、約60年は使用できると言われ、屋根としての役割を終えると、畑の肥料として土に返る。循環型のシステムが、ずっと昔から成り立っているものなのだ。

今回、長野県小谷村で「第7回 PEACE MAN CAMP」を開催したきっかけは、SBC信越放送制作『とうちゃんは茅葺師』というドキュメント番組のナレーションを白井貴子が担当したことからだ。この番組は、2021年日本民間放送連盟賞テレビ番組部門で優秀賞を受賞。番組に登場する‟とうちゃん”こと、小谷屋根を営む茅葺師、松澤朋典さんを迎えての体験会となった。

“エコ”や‟環境保全”などの言葉が使われる前から、茅をめぐる一連の活動は、人々の生活を支えている上、非常に理にかなっている。ファンと共に、そのことを体感することが出来たイベントとなった。

40年の足跡と未来が見えたアニバーサリーライブ

小谷村で行われた「第7回 PEACE MAN CAMP」から、およそ2週間後の11月6日、大手町三井ホールで、『白井貴子 40th Anniversary LIVE 「CHANCE for a New Life 2021」TAKAKO SHIRAI & the Crazy Boys + Jr. 新たなる NEXT GATE 始まる!』が開催された。ライブでは、楽曲を楽しむのはもちろんのこと、PEACE MAN CAMPを行う理由や、そこに至るモチベーションなども感じることができた。

衣装ひとつ取っても、彼女の想いが良く分かる。衣装チェンジで登場した白井は、ミニスカート姿を披露。この衣装は、80年代のままであり、当時の衣装を作っていたのは、彼女のお母さんだと話した。一針一針に愛情が込めて作られた衣装は、いま光を浴びても美しく、キュートな雰囲気を持つ彼女に良く似合っていた。昔のものを、いまもサラッと取り入れられる柔軟さと、自身の“らしさ”を貫く芯の強さの両方を垣間見たように感じた。また、彼女が使用していた衣装をリメイクし、バンドメンバーであるバイオリニストの向江陽子の衣装にも転用するといった演出は、アップサイクルのお手本を見せてもらったようだった。

ライブで披露した楽曲は、「CHANCE!」「SOMEDAY」「プリンセス TIFFA」、そしてこの日のために作られた「80’s Medley」から、「RUN」「Born Free」や「涙河(NAMIDAGAWA)」などの新旧を織り交ぜたもの。また、全国女子硬式野球の応援歌となっている「元気にな~れ」を披露し、2021年8月23日に初めて甲子園で開催された第25回 全国高等学校女子硬式野球選手権大会の決勝戦後に、優勝旗を掲げての行進の際に使用されたというエピソードも話してくれた。

多くの有名曲やその楽曲のストーリーを聞くたびに、音楽活動のキャリアを感じ、その素晴らしさに感動する。そして、いまも当時の雰囲気もありながらも、歳を重ねた魅力が加えられた彼女の姿に惹きつけられた。

80年代の楽曲を聴くと、客席は、当時に気持ちが戻っているような、幸せな雰囲気に包まれていた。コロナ対策のため声を出せないが、突き上げた拳や手拍子には、40年分の想いが詰まっているようだ。ステージを見ていると、アーティストとファンという関係であると共に、同じ時代を過ごしてきた仲間のような一体感が見えてくる。近年リリースした楽曲も堪能し、白井貴子の活動にも共感し、自分たちも出来ることを取り組んでいく。単なる同窓会ではなく、未来に向けて動いているということを非常に感じるステージだった。

ライブは、ゲストアーティストも参加し、アニバーサリーにふさわしい賑やかさがあった。東京2020パラリンピック閉会式で、バイオリンを演奏した、脳性まひのバイオリニスト式町水晶(みずき)さんも登場。プロのミュージシャンとして、舞台に立つに至るまでの奮起や努力について、白井がステージ上で紹介し、式町さんもその話に笑顔で答える。パラリンピックの舞台よりも、今日のステージの方が緊張するなどと冗談も言いながら、「小田原藩竜馬会の歌」「~今夜はIt’s All Right」を披露。美しく、伸びやかなバイオリンの音色を聴いていると、彼の目標に向かって進んでいくために行った、並々ならぬ精神力や努力する姿勢に感服するばかりだった。

▶ライブは大盛況で幕を閉じた。観客と共に最後に記念撮影。この日は、花王株式会社様からビオレのハンドソープと消毒液をセットでご提供いただいた。白井は、ビオレママとして長年、CMなどで声の出演をしている。コロナ対策で石鹸での手洗いと小まめな手指消毒は、非常に重要になっている。「花王 あわあわ手あらいのうた」をスーパーなどで耳にした方も多いかと思う。


音楽と自然環境 どちらも人間には欠かせないものだから

小田原ふるさと大使を務める白井貴子は、大使としての活動がきっかけで、式町水晶さんと出会ったそうだ。地域や地方との繋がりや自然環境保全など、人間が生きていく上で必要なものとの繋がりながら音楽活動をする彼女は、神奈川県環境大使、海老名市森の楽校アドバイザーや、環境省3R推進マイスターなどを歴任している。また、南伊豆に3000坪弱の森を所有し、そこをマーガレットグラウンドと名付け、イベントを行っている。森を活用しながら、楽しく自然を触れることができる環境を作る。声高に“環境を守りましょう”とか“自然を保護しよう”と叫ぶのではなく、人間が生活していく上で、森も海も切っても切れない存在であることを理解させてくれる。

2021年は、各種メディアでSDGsという言葉が多用されてきた。もちろん、組み込まれている17の目標について知るきっかけを作ることは、非常に大切なことだが、まだまだ言葉だけが先行していて、実現するための行動変容までの道のりは長そうだ。

しかし、白井貴子が2000年代から行ってきたことは、目標を掲げるというよりも、彼女が実際に感じたものをカタチにし、少しずつ輪を広げていくものだ。時に媒体として、時にアーティストとして、状況に応じてしなやかに役割を変えながらメッセージを伝えているのだ。

公式HPでは、2022年もデビュー40周年記念を続けると宣言している。2022年、次の世代に良い地球環境を渡すためには、いまの私たちがやるべきことが多くある。その中で、彼女が担う役割はより大きくなっているように感じる。

音楽と自然環境。どちらも、私たちの生活には欠かすことができない存在だ。2本の柱ではなく、大きな1つの柱は、2022年もしっかりと活動の礎として彼女の中には存在しているだろう。

【白井貴子 2022年ライブ情報】

「白井貴子 小さなコンサート ~超えて行こうよ 涙の河を~」

2022年2月19日(土)

池袋 自由学園明日館講堂

豊島区西池袋2‐31‐3

昼の部13:00~14:15(開場12:00)

夕方の部16:30~17:15(開場 15:30)

チケット全席自由 4,500円(税込)

購入方法などについては、公式HPをご確認ください。

https://takako-shirai.jp/

NPO法人ミュージックソムリエ協会

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