文化放送『女が音楽を始めるときはモテたいからじゃない』(後編) ディレクターの熱意
4月になり、ラジオも新番組が各局でスタートしている。数多くの番組があり、どの番組も魅力的だが、その中でもミュージックソムリエ協会が注目したのが、文化放送でスタートした、『女が音楽を始めるときはモテたいからじゃない』だ。
番組ディレクターは、吹野圭治さん。男性だ。私は、スタッフは女性だろう、と想像していたので、お会いした時に少し驚いた。
60年以上も前、まだロックが不良の音楽なんて言われていた時代から、“モテたいから”というのが、男性が音楽を始める動機のひとつになっていたと思う。たとえそれが、本心ではなかったとしても、何となく分かりやすい動機として成立している。しかし、女性が音楽を始めるときに、“モテたい”という動機はあまり聞かないように思う。もしも“モテ”を追求するなら、違う職業を選ぶのではないだろうか。
そんなことを思っていたので、番組タイトル『女が音楽を始めるときはモテたいからじゃない』は、女性視点の発想かと思い、番組制作も女性が携わっているのかと思っていたのだ。
さて、前置きが長くなってしまったが、まずは、番組タイトル。インパクト大、かつ秀逸なものは、どこから生まれたのかと言うと、実は、とある女性アーティストがライブのMCで、吐き出した言葉だったそうだ。吹野さんは、その言葉に深く感動し、心に言葉が残ったそうだ。そして、その言葉をタイトルにした番組が企画された。まずは、タイトルありき、という側面が強かったそうだ。
日本では、毎日たくさんの音楽が生まれている。恋愛をテーマにしたものもあるが、そうではなく、自分の気持ちや日々のことを歌った作品もある。だた、日々の暮らし、仕事のことや友人との関係、そして暮らしから繋がる自分と社会との関わりなど、自分の周りにある、リアルな出来事にメロディを乗せて、歌として表現している人は、女性の方が多い印象を吹野さんは持っていたそうだ。
暮らしている中で起こる出来事と、それに対する感情。それらをメロディに乗せて、嘆いていたり、優しく叱っていたり…。そういう感情を歌に乗せる女性アーティストに、吹野さんは、潜在的に敬意を感じていたのかもしれないと語ってくれた。吹野さんが潜在的に持っていた敬意と、ライブ会場で耳にした「女が音楽を始めるときはモテたいからじゃない」という言葉。この2つが結びついて、番組の企画が出来たそうだ。2つの言葉が繋がった時、吹野さんは「ほらね!」と思ったそうだ。
『女が音楽を始めるときはモテたいからじゃない』は、昨年9月から3度に渡り、特番で放送されたものだ。各回とも反響が大きかったために、今春よりレギュラー放送となった。
パーソナリティを務めて欲しい女性アーティストは、番組企画が決まったと同時に、パッと浮かんだそうだ。恋愛のことだけではなく、日常のさまざまな感情を言葉として紡いでいる人たちである、というのが出演して貰いたいアーティストへの共通した印象だ。
アーティスト側に連絡を取り、 “おもしろそう”という賛同の声が上がり、タイトルも非常に気に入ってもらい(タイトルを気にってもらうのは「番組をジャケ買いしてもらった感じ」と吹野さんは語っていた。)、順調に話は進み、特番を経て、今春からのレギュラー放送が確定していったそうだ。パーソナリティを務めているアーティストは、吹野さんが最初に浮かんだ、まさにその人たちなのだ。
番組タイトルは、文化放送でも「今までにないタイトル」だそうだ。また音楽とアーティスト個人を深く掘り下げていくような番組も、これまであまり無かったタイプの番組だと伺った。特番からレギュラー番組化にしていったことあり、文化放送からこれまでにない番組を発信していきたい、という意識が表れているようだ。
『女が音楽を始めるときはモテたいからじゃない』この番組のテーマは、「元気がなくても、意地を張っていても、もう身動きが取れない時も、それでも前に進まなくてはならないあなたの一歩を応援する」だ。深夜の悶々とした時間に聴くのも良いし、radikoのタイムフリー機能を使えば、いつでも好きな時間に番組を聴くことも出来る。
多くの“信者”(ファン)が崇める女性アーティストが、自身の音楽ルーツや自分自身のこと、そしてリスナーと交流をしていく。回数を重ねていく度に、輪が広がっていき、「伝わるものは伝わる」という思いで番組はスタートしている。
各週のアーティストの心の中や音楽に対する思い、そしてリスナーとの交流で見えてくる、その人らしさなど。番組を通して、アーティストの魅力もたくさん知ることが出来そうだ。
ぜひ、番組を聞いて自分自身の耳で、その魅力を感じ取ってもらいたい。
インタビュー・文章:石井由紀子
(ミュージックソムリエ)
【番組概要】
タイトル:『女が音楽を始めるときはモテたいからじゃない』
放送時間:毎週水曜日 26時30分~27時00分
放送局:文化放送(FM91.6 & AM1134)radikoでもお楽しみ頂けます。
パーソナリティ:1週目 コレサワ
2週目 竹内アンナ
3週目 NakamuraEmi
4週目 FINLANDS(塩入冬湖)
5週目 ヒグチアイ
メールアドレス:janai@joqr.net
Twitter:@_janainoyo
文化放送
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