店舗としてのCDショップの価値とは(2)

 コロナウイルス感染拡大防止のため、ライフスタイルの変化を求められた2020年。CDショップも、さまざまな工夫を凝らして営業を続けてきました。オンラインと異なり、リリースされたパッケージ商品を手に取ってもらう場であるCDショップ。その存在について、CDショップ大賞にも尽力頂いている山野楽器 EC営業課 仲西正代さんと、長野県で14店舗を展開する企業 平安堂 物販事業部 秋澤加代さんに伺っています。今回は、2020年のCDトレンドや、ショップならではのエピソードを話して頂きました。

CDの新しいムーブメント? 「デカジャケット」

―前回は、音楽シーンの広がり…特にヒットの源の多様化や、長く活躍しているアーティストがたくさんいることなどもあり、もはやJ-POPという括りでの店頭展開が難しいというお話を伺いました。では、2020年で特筆すべきCDリリースの傾向などはありましたか?

山野楽器 仲西(以下 仲西):部屋に飾れるくらいのジャケット、LPサイズとか。最近多いじゃないですか、レコードサイズの作品。

平安堂 秋澤(以下 秋澤):多いですねー。すごい多いんですよ。いわゆる「デカジャケット」。

仲西:お客様からも「今までずっとプラケースで揃えて棚に入れてたのに入らないから困る」って言われたこともあります(笑)


―私、レコード会社に在籍していた時に、CDショップ店の店長から、“特殊パッケージとか、やめて欲しいんだよなー。”って、よく言われてました。

仲西:そういうパッケージの商品は、陳列がしづらいですからね。見本品、いわゆるダミーケースを作ってやってますけど…。(パッケージが特殊なので、お客さんは中身を見ることができない。そのため、中身をイメージしてもらえるように、見本品を店側が作成している、という意味。)

秋澤:そうそう。ダミーケースも特殊すぎちゃって大変なんですよね。でも、出来るだけ実際のものに近いと売れるんです。縮小サイズのものをダミーケースで置いていると、見向きもされないから、完璧に近い形にしないといけないですね。

仲西:嵐がLPレコードサイズの 「デカジャケット」でリリースした時も、現物を置くとガンガン売れてたんですよ。お客さんは、手にとって“やっぱり欲しい”ってなるんだと思うんですよね。


―「デカジャケット」 は、LPレコードのサイズということですが、アナログレコードの売れ行きはいかがですか?

秋澤:少なくとも地方は(平安堂は長野県の会社)まだそこまでじゃないですよね。確かにアナログ需要はあるので、中古LPセールっていうのを催事としてはやります。そして、すごく売れます。ただ、お客さんは年配の方で、コレクターって感じですね。

仲西:山野楽器でも、催事をやっているお店では、それなりに人も来ますのでやった方がいいんじゃないですか?という話は聞きますが…。


―そうすると、「デカジャケット」というのは、お部屋に飾る特典みたいな位置づけですか?

秋澤・仲西:そうそう。ポスターの代わりですよね。

仲西:特典が最近減っているので、結構ポスター喜ばれてるんです。一時期は、持って帰るのが邪魔だって減っていたんですけど、最近はポスターの特典自体があまりないので、結構大きいサイズのポスターのが欲しいっていう人が多いらしいんですよ。レコードサイズだと形が良いので、飾るとカッコいいじゃないですか。

秋澤:それに、ポスターよりも場所取らないからね。

仲西:インテリアになりますもんね。


手書きポップと聖地化は店舗ならではの光景

―CDショップの特徴として挙げられるのが、手書きポップですが、こちらに変化はありますか?

秋澤:手書きPOPは全体的に減っている感じはしますね…。単純に手が回っていないんじゃないかな、と思いますが。

仲西:山野楽器 ミウィ橋本店では、私が店長をやっている時に、POPや書くことが好きで採用したスタッフばかりなので、割と上手に書けています。でも、今、パソコンが中心で、手書きは日常じゃないんですよね。だから”字が下手なので書きたくないんですけど”というスタッフも時々いて。POPを作る意味を説明しないといけないこともあります。"お客様一人ひとりにに声をかける代わりに、見て読んで購入につなげる。キャッチだから" っていう感じで。


―CDショップの特徴のもう一つが、お店が 「聖地化」することかと思います。かつて 新星堂 町田店さんは、aikoさんのメジャーデビュー後の全作品が揃うことから「愛子堂」として親しまれていました。(*1)そして、仲西さんが店長をされていた 山野楽器ミウィ橋本店も、Official髭男dism、“ヒゲダンの聖地”とも呼ばれてますね。

仲西:はい。熱を込めて展開してよかったです。ヒゲダンがインディーズの時、ライブにスタッフ数名で行ったんですね。ライブがすごく良かったので、そこでハマったんですよ。それで、応援しようっていう気持ちが芽生えて、それがお店全体に広がっていくんです。ヒゲダンに限らず、ライブは見たほうがいいよと、店長だった時は、現場のスタッフにも伝えていました。

―確かに、手書きポップの熱量も伝わってきます。そういえば、仲西さんは、お店に来たお客さんにも"テレビ観ましたよ"と、声かけられたことがあるとか?

仲西:フジテレビで放送した『99人の壁』(『超逆境クイズバトル!!99人の壁』*3)の放送した後ですね。クイズで、第4回でCDショップ大賞を獲った、ももクロ(ももいろクローバーZ)に関連する問題が出て、それで答えられたんです。そうしたら放送後に、ファンの方がお店にいらして "番組見ました!" って言ってくださって。嬉しかったですね。

秋澤:いやぁ、テレビであれだけ爪痕残すって、すごいですよ!


SNSの情報や傾向を店舗でリアルに体感している

―テレビで紹介された楽曲が翌日にお店で売れるというお話は伺いましたが(1の記事参照)普段、お二人はどのように情報をキャッチしていますか?

秋澤:一応、twitterのトレンドはチェックしますね、あとテレビを見終わってからも、Twitterのトレンドはチェックします。Amazonさんの急上昇ランキングも確認します。

仲西:私も、それは見ますね。

秋澤:SNSやオンラインは、リアルタイムで反応が分かって、単純な総合順位とは違うなと感じています。

仲西:そういう数字は、実は売り場にも直結しているんですよね。お客様も自分でYouTubeとかをチェックして"いいなぁ"と思って、"CD買おうかな?"という行動に繋がっていると思うんです。YouTubeや、iTunesやサブスクリプションを試聴機のように使っている人が多いって耳にします。


―SNSのチェックは、やはり重要なんですね。

仲西:SNSで10代とか20代とか若い人の会話とか見て、いま話題になっていることを知るのが、結構面白いんですよ。さりげなく、“こういうの流行っているの?"とか聞いちゃったりして(笑)。とても、参考になってます。

SNSで2020年に印象的だったのは、藤井風さんですね。CD出るタイミングで皆、すごく騒いでいたんです。それで、改めて曲を聴いていいなと思いました。

秋澤:そうそう、藤井風さんって、びっくりする位、若いファンが多いんですよ。中学生とか聴いてたりするんで、びっくりしたんです。80年代から90年代の音を感じるので、ファン層も40代くらいからか、Nulbarichなどを聴いているような、若くても大人びた感じの子が買うのかな?と思ったら、あどけない感じの中学生が買っていて。とても印象に残っていますね。

仲西:親も聴いている、とかですかね。結構、親子で聴いている人が多いなって思います。

SNSでカバー曲がアップされているので、いろんな人に聴いてもらう機会も多いのかもしれませんね。藤井風さんとかもそうなんですけど、YouTubeでカバーしててすごく評価されていたので、そういうのも最近関係しているような気がします。


3へ続く


*1 新星堂町田店では、aikoさんのメジャーデビュー後の全てのシングル、アルバム、DVDを取り揃えていて、そのことでご本人が、ツアーで「愛子堂」と命名。移転先でも愛子堂としてファンに愛されていたが、多くのファンに惜しまれつつ閉店。

*2フジテレビ『超逆境クイズバトル!!99人の壁』2020年8月8日放送。「真夏の音楽祭りSP」では、レコード会社、CD販売会社、ラジオ局など音楽業界に携わるプロ99人が集結。仲西さんも99人のひとりとして出演。


【対談者経歴】

仲西正代

株式会社山野楽器 EC営業課 係長

1994年 入社
新店舗立ち上げ、リニューアル、マーチャンダイザー、店長を経て今に至る。インディーズからゆず、SEKAI NO OWARI、Official髭男dismなどを大きく打ち出して展開。
CDショップ大賞実行委員長を歴任し、数々の取材対応も経験。フジテレビ『超逆境クイズバトル!!99人の壁』2020年8月8日放送にて、音楽業界に携わるプロ99人として出演。


秋澤加代
株式会社平安堂 物販事業部 
1988年 株式会社STACT入社 (*星光堂出身者によるショップ指導と販促事業を行う企業)1992年 株式会社平安堂入社し、一度退職後、1999年復職。STACT時代では、店舗販促物作成、販売を担当。平安堂にて、レンタル・セル担当の主任、 レンタル商業組合プロモーション委員会に立ち上げ時より参加。現在は、物販事業部 マスター・チーフ・バイヤーを担当し、全店舗の企画やセールスプロモーションなどを行う。


聞き手:髙安紗やか(CDショップ大賞事務局長/ミュージックソムリエ協会理事長)

構成・編集:石井由紀子(ミュージックソムリエ)




NPO法人ミュージックソムリエ協会

NPO法人ミュージックソムリエ協会は音楽に関与する人材を発掘し、育成し、音楽とその周辺のソフト産業の活性化・多様化をもたらします。

0コメント

  • 1000 / 1000