JASRAC菅原 元理事長が語る「ミュージック・ソムリエへの期待」

一般社団法人日本音楽著作権協会
元理事長 菅原 瑞夫


キャッシュフロー時代の職人不在、なんとかしないと手遅れに
 今の音楽は流通と盛衰のスピードがものすごく速い。ジャンルも多く、曲数となれば膨大です。聴くのも簡単になったけれど、非常に安易なデータとして扱われています。かつては、音楽との出会いからしてアナログだった。人の薦めや、ときには偶然に耳にした曲を探し尋ねたりして、感情を揺さぶられる音楽との邂逅があった。音作りにも職人技が生かされていた。プロが作り込んだ曲は何回聴いても飽きないですよ。それがデジタル化とともに簡便化され、ある程度の音作りが誰でもできるようになった。90年代になると力のあったスタッフが経営優先策によってどんどん削減されていった。それからは職人不在の時代です。キャッシュフローばかりを追って、音楽がただ消えゆく刹那的なものになっている。新曲が1ヶ月で忘れられていく。人の心に根を下ろし聴き継がれていくような音楽が作られなくなったら、将来への蓄積ができません。今やらないと本当に手遅れになってしまう。そう危惧しています。

多様な音楽世界への道標、厳しい目で新しい音楽作りも
 過去の偉大な作品をはじめ、素晴らしい音楽はたくさんある。なのに自分の好みの周辺だけに閉じこもってしまうのは、すごく残念なことです。「こんな音楽もあるんだよ」と別の世界への道標となる存在がいろいろな場面にいたら、音楽と人との関係はもっと豊かになる。曲についても音楽的な分析や作曲された背景など、いろいろな切り口から魅力を伝えることができ、知識の裏付けを持って音楽の世界観をも提供できる。それがミュージック・ソムリエです。過去の偉大な作品への水先案内人であり、さまざまな音楽世界への道標であると同時に、豊富な知識と厳しい鑑識眼があるからこそ、一歩進んで「こういう音楽を作ったらどうか」という提案もできるのではないでしょうか。未来に残っていく音楽の指標となり、素晴らしい音楽を産み出す原動力にもなってほしいと期待しています。


NPO法人ミュージックソムリエ協会

NPO法人ミュージックソムリエ協会は音楽に関与する人材を発掘し、育成し、音楽とその周辺のソフト産業の活性化・多様化をもたらします。

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