CDショップ大賞スペシャル・ライブ  ライブ・レポート

2020年2月にオープンした下北沢Flowers LoftでCDショップ大賞スペシャル・ライブが開催。新型コロナウィルスの影響で無観客ライブの収録となってしまったが、その模様をライブ・レポートという形でお伝えする。

まず登場したのはドラマストア。アルバム『DRAMA STORE』で大阪ブロックの地方賞を受賞した正統派ポップバンドだ。受賞発表収録では「どうしたらファンに喜んでもらえるか、多くの人に届くかを考えて音楽を作っている。こんなご時世だからこそ、より人々の生活に寄り添える音楽を鳴らしていきたい。」とコメントを寄せた彼らは受賞作からの楽曲を中心に4曲を演奏した。

オープニング・ナンバーはアルバムでも一曲目を飾った「エンドロール」。躍動感のあるビートとサビにかけて高まるメロディは、自然とライブハウスの中で高揚感が生まれていく。続けて演奏したのは「世界はまだ僕を知らない」。バスドラの4つ打ちビートに乗り、疾走感溢れるギターのリフとメロディが展開されていくライブの定番曲だ。メンバー全員が普段のライブさながら、ステージ上で激しく動き回る。2番に入るタイミングではギターの鳥山がピアノを弾き、多様なアレンジメントを4人で再現していく。

3曲目は昨年リリースの最新シングル「ラブソングはいらない」。アルバム『DRAMA STORE』には収録されていないものの、すでに新たな代表曲として知られている楽曲だ。J-POPの名曲たちに通ずるセンチメンタルな王道のメロディを、ボーカルの長谷川がファルセットを活かした伸びやかな声で歌い上げていく。

最後に披露したのは「グッバイ・ヒーロー」。こもったピアノのイントロから始まるバラードナンバーだ。抑制の効いた丁寧なメロディを歌った前半部から、倍転する後半部はメロディと声と、バンドの演奏陣が絡み合っていく。特にギターソロとボーカルのフェイクが重なり合う瞬間はこのライブのハイライトであり、ドラマストアのバンドとしての魅力が存分に発揮されていた。


受賞発表収録で寄せた言葉通り、彼らが生活に寄り添うポップでセンチメンタルな楽曲を丁寧に届けるステージになった。

次に登場したのは甲信越ブロック賞を受賞した5人組ポップパンクバンドNO BRIGHT GIRLだ。昨年初めてリリースした1stEP『HAPPY』がいきなり話題を呼び、地域ブロック賞を受賞。メンバー全員が20代前半ということもあり、若々しいエネルギーを詰め込んだような楽曲と演奏が魅力だ。

無観客でのライブが初めてということもあり、リハーサル中にメンバーは「ちょっとやりにくい」と口にしていたものの、ステージが始まるとなると空気が一変。「延期になったツアー・ファイナルだと思って」と円陣を組んだのちに、メロディックなギターリフが印象的なショート・チューン「L,N,C,L」からライブがスタートする。ボーカルのDyezoは、ステージを縦横無尽に駆け巡りながら熱い歌声を響かせていく。続けてスタートしたのは、受賞作のリード曲「Take Me Back」。前のめりな演奏の中で、アンセミックなメロディとコーラスワークが響く。リードギターのフレーズもボーカルと呼応するように、荒々しさを帯びていく。

そして最後には今年リリースされたばかりの2nd EP『Will』より「Vestige」を披露。力強いブリッジミュートのフレーズから疾走感のあるドラミングになだれ込んでいくミッドテンポの楽曲だ。メロディ・ラインと楽器隊のフレーズが次々と展開していくアレンジからは『HAPPY』からメンバーのソングライティングと演奏が大きく成長を遂げていることがうかがえた。


わずか10分のステージながらも、ライブハウスは高揚感と余韻に包まれた。
しかし、ここでメンバーがあることに気がつく。実はドラムのOtoyaが曲中で一箇所ドラムのフレーズを飛ばしていたのである。後日ライブの様子が配信されるということもあり、メンバーはもう一度一曲目から演奏をやり直し。無観客ライブならではの貴重なハプニングではありながら、一回目よりさらに熱の籠った演奏を披露した。

惜しくも無観客ライブの収録と配信という形式になってしまったスペシャル・ライブであったが、2組ともアーティストとしての魅力を凝縮したステージを披露した。


吉田ボブ


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